CT 基本編
CTといってもスキャンのことではない。
「Catch Ball Therapy」=「キャッチボール療法」のことである。
CTとは、発達を支援する活動として、心身がよりよい状態に向かうようにすることを目的とする。道具はボール。大きさに制限はなく、丸くて転がるものであれば固さや材質も特には問わない。応用や発展として、バットやグローブを使用することもある。一対一できっちりと向かい合い、一つのボールを気持ちと心を込めて投げ合うことがその基本となる。
事例1
股関節の疾患により長期入院
入院前に少年野球チームに所属
心理的安定
野球チーム復帰に向けての調整
納得のいくまで、ボールを投げさせる
いい気分で投げることができるよう、掛け声や受け方を工夫
掛け声は、タイミングよく 向上心をあおるよう留意
適切なグラブさばきで気持ちの良い音を出し、場を盛り上げる
長期入院により視線が固定されがちで、また、主な活動は手と口先に偏っていたが、全身を使うことで、身体全体の動きが出てきた。投球技術発達の最近接領域を刺激することで、向上心を持続、適切なタイミングでの成功体験を積むことができた。同時に、つまらない言動が減少し、目力が出てきた。ただ、下半身に負担をかけるため、医療機関には内緒で行う必要があり、関係者に見つかると、厳しく叱責されることもしばしばであった。
家族との憩いの時間がまだまだ重要な位置を占め、しかも、体中を使って一日中動いていたい小学校時代に、2年を越す入院生活は厳しいものである。
いらいらして、友達に対して不適切な言動を繰り返したり、投げやりになってしまうことも多々ある。いくら入院生活をサポートしようと関係者が努力しても、仕方のない部分である。
心が鬱屈しているような状態のときは、まず、身体を十分に動かすことが重要となる。身体を気持ちよく動かすことで、心も解き放たれていくような錯覚に持ち込むのである。しかも、その活動が、多少困難でも自分の努力で実現可能と実感することができ、また、かなりの部分を、快適で前向きな状況で取り組めるよう支援する。この活動を、一球一球、真剣に繰り返す。このことにより、視線が、身近な友達のみから、好きな野球、退院後の野球チーム復帰へと広がりを見せるのである。
下半身には多少負担があるかもしれないが、常識の範囲内であれば、疾患の悪化や入院期間の延長という事態にはならないと思われる。安全のために医療機関に相談後実施する方法も考えられるが、相談相手によっては実施不可能になる可能性もあるので、多少の事前調査や根回しが必要となる。
事例2
家庭の事情で長期入所
脳に起因する身体障害、知的障害あり
将来の夢をもつ
上半身の無駄な力を抜き、全身のスムーズな動きを導き出す
具体的な場面を想定してピッチングを実施
投げる前の入念な準備体操 リラックス 手指、肘を十分に伸ばす
投げる前、投げるとき、投げた後の状況を言葉にする
基本的には、よく晴れた日に、芝生の上で必ず野球帽をかぶって取り組むことを前提とした。甲子園球場での試合が想定場面となり、意欲や緊張感を導き出すことができた。
全体的に屈曲したまま力を込めてしまう状況であったが、試合前、また、要所での投球前の脱力やストレッチにより、体幹、肩、肘、手首、指の無駄な力が抜け、必要な動きや力の入れ方を学習することができた。その際に欠かすことができなかったのは、深呼吸である。すーっと声を出しながら息を吐き出すことで、無駄な力を抜くことができた。
肩の力を抜く、肘を上に上げる等のアドバイスはキャッチャーの立場で行った。また、よくない動きが続く場合、その訂正には、バッターとして痛い目にあわせてから(本気でホームランをねらう)、「今のボールは、腕が縮んでいたから伸びがなかった」などとインタビューに答える形で聞かせると神妙に反省することができた。
大人になったらサッカー選手か野球選手になるというのが夢であったので、野球選手のほうがいいだろうと進めた。車椅子でサッカーはやりにくい。野球選手も難しいが、私たちがそうであったように、彼も中学生頃にはそれに気づいてくれることと信じて、野球選手にむけての努力を続けさせた。
野球はやはり、青空の下、気持ちの良いグランドでやるべきもので、野球帽も欠かせない。形はやはり大切にしたいと考えた。それだけのことだが、野球に対する姿勢が良くなるような気がした。
野球という大きな目標、エースという夢があるので、訓練等ではなかなか気持ちの入らない動きにもスムーズに取り組める。試合の状況、身体の状況、必要な動き等については、実況アナウンサー、解説者、監督、キャッチャー、相手チームバッター等、その都度適切な役を選択し声をかけ、手をそえる。「おーっと、今のボールはどうですか吉田さん」「うーん、肘が伸びていないし、さがったままですねー。ちょっと、どうしたんでしょうね」とか、「どうした、手投げになってるぞ。もっと腰の辺りから回転させろ。こんな感じで」とか、「打ったボールはストレート。気合の入らない、勢いのないボールだったので思い切りたたきました」という感じである。
あとは、次への意欲のために、少しがんばって努力すれば必ず自分でできる動きを課題とすることである。
つづく