
ドクターJにはなれない
―アメリカに渡ってきた理由―
日本の医学部を卒業してアメリカに来ようと思ったのは、卒業後インターン研修をした横須賀の米海軍病院で、出会った優秀なアメリカ人医師達の影響が大きいのかもしれません。その中でも、ドクターJは、映画でも紹介された「パッチ・アダムス」に負けると劣らぬ、極めて異色のドクターですが、患者さんを思いやる気持ちは人一倍です。ドクターJは、とにかく明るく、患者を暗くさせることがありません。緊張している子供には、彼独特の質問で緊張をほぐしていきます。
DR.J 「今いくつ?」
子供 「5つ。」
DR.J 「結婚してる?」
子供 「結婚なんかしてない。」
DR.J 「あっそう。子供は何人?」
子供 「子供なんかいないよ。」
DR.J 「たばこは?」
子供 「たばこなんかすわないよ。」
子供はこんな質問で、笑い出したり、必死になって否定したりします。そうする内に、いつの間にかドクターJの世界に入っているのです。私も彼に習って、子供の関心を取ろうとしますが、なかなか簡単ではありません。
私 「今学校に行ってるの?」
子供 「幼稚園。」
私 「幼稚園楽しい?」
子供 「うん。」
私 「お友達いっぱいいる?」
子供 「うん。」
私 「ガールフレンドは何人?」
子供 「3人くらい。」
私 「3人も!先生なんか1人もいないのに。」
子供 「‐‐‐」
私 「1人先生に紹介してくれる?」
子供 「??」
でも、こんな会話で笑うのは大抵、同伴のお母さんやお父さんで、聞かれている、当の子供は、「????」状態になってしまい、なんだか変わったドクターだな、と思われる程度です。でもそれで恐怖心がなくなってくれれば、私としては成功です。子供の恐怖心を取るのが、まず小児科医としての役目ですので。また、アメリカの小児科医の多くが白衣を着ない様に、私も子供の前では白衣を着ません。
上記の会話以外に、診察の前と後には必ず挨拶をします。「こんにちわ。」「バイバイ。」といった具合です。これは大切なコミュニケーションの一部です。診察室に入った時点から(注)ドクターとして子供を観察するわけですが、コミュニケーションの取り方で、いろいろな病気や発達異常の徴候がわかることもあるからです。
(注)アメリカの診察室は、患者さんが中で待っていて、ドクターが診察室に入っていきます。
医療分野