脆弱X症候群(FXS=Fragile X syndrome)
性染色体にはX染色体とY染色体があり、一般的に男性はXYで、女性はYYという組み合わせになっています。今回は、X染色体を構成するある1遺伝子が脆弱(ぜいじゃく)になって起こる、脆弱X症候群という遺伝的疾患について説明します。脆弱X症候群は比較的頻度の高い精神遅滞を起こす病気にも関わらず、一般的にはあまり知られていません。もし、家族や近い親戚に精神遅滞の人が何人もいると、それは、脆弱X症候群によるものかもしれません。
脆弱X症候群とは
脆弱X症候群は、精神遅滞を起こす遺伝的疾患で最も一般的なものと言われていますが、X染色体上の一遺伝子の突然変異によって起こります。そして、その突然変異による遺伝情報は親から子供へと何代も受け継がれていきます。
脆弱X症候群の症状は、突然変異した遺伝子が、体に必要なある種のタンパク質を十分作らないことによって起こります。そして、この影響を最も受けるのが脳なのです。
従って、知能に対する影響が最も顕著に出てきます。脆弱X症候群の男性のほとんどに知能指数の低下が認められますが、女性の場合、知能に対する影響は様々です。精神遅滞の女性もいるかと思えば、まったく知能指数が正常の女性もいます。
現在、アメリカでは3,500から8,900人の男性に1人は発現者で、1,000人の男性に1人は保因者、また、女性の250人から500人に1人が保因者だと推定されています。女性の発現者は4,000人に1人程度ではないかと考えられています。
脆弱X症候群の原因
前述したように、X染色体上にある1つの遺伝子の異常によって起こりますが、この遺伝子はFMR1 (脆弱X精神遅滞1)遺伝子と呼ばれています。この遺伝子の情報によって、細胞内で体に必要なタンパク質が生成されますが、タンパク質は体の構成物質で、それぞれのタンパク質は体の中で決められた仕事をします。体の器官や組織を構成したり、体に必要な化学反応に関わります。
遺伝子が持つ遺伝情報が突然変化すると、細胞はその遺伝情報に従って、タンパク質を生成することができないか、利用できるような形に生成できなくなります。その結果、FMR1遺伝子は、体に必要なFMRP=脆弱精神遅滞タンパク質を作れなくなるのです。このFMRPは、脳内のある細胞間コミュニケーションを制御しているのではないか——と考えている専門家もいます。そして、FMRPが適度に利用できないと、この細胞間コミュニケーションが過剰になるか、通常通り作用しないことになります。
FMR1遺伝子内の異常の程度により、発現者=完全突然変異 full mutation の人と保因者 permutation に分けられます。
症状と身体的特徴
精神遅滞が最も一般的な症状ですが、女子よりも男子の方が顕著です。精神面では他に、集中力の持続性の欠如、衝動性、動作の繰り返し、口に食べ物を詰めたり、アイコンタクトを避ける、においや音などに敏感、知らない人が多い所で恥ずかしがったり不安感を持つ、文句の繰り返しや行動の繰り返しに強い。ユーモアがあり、楽しく愛される人格を持つプラス面もあります。女性は30代半ばで閉経を迎えることがあります。
身体的特徴としては、突き出した大きな耳、突き出した顎(あご)、大きな額、大きい頭、斜視、くぼんだ胸、扁平足、大きな睾丸(男子)、関節の異常な柔軟性、心疾患(僧帽弁逸脱)などがあります。
診断と早期発見
診断は、精神遅滞やその他の症状、身体的特徴の有無などを参考にしますが、確定診断は血液によるFMR―1 DNAテストで行ないます。
早期発見が望まれますが、ダウン症候群の子供のように、出生時の身体特徴があまりはっきりしていないので、脆弱X症候群の子供は診断が遅れがちです。言葉、お座り、歩行、あるいはトイレット・トレーニングの遅れなどから、親が子供の発達の遅れを心配しますが、2才前後にならないと発達の遅滞は分かりにくく、実際に脆弱X症候群と診断されるのは3才前後だと思われます。行動や身体的特徴だけで早期診断するのは非常に困難です。
脆弱X症候群のある子供は、自閉症の子供と同じような行動をすることがあります。例えば、手をせわしく動かしたり、人と会うことを避けたり。脆弱X症候群の子が自閉症として専門医に紹介されることも少なくありません。脆弱X症候群の人の15~25%が、一生のうち1回は自閉症の診断基準を満たすことがあると言われています。
脆弱X症候群の治療
言語療法や作業療法などの早期介入により、脆弱X症候群の子供の能力を最大限に高めることができます。興奮薬、抗うつ薬、抗不安薬などの薬剤も一部の子供に効果があります。
行動療法(差し迫った問題に対して、効果的な対処法を子供に教えるセラピー。子供の考え方や問題への対処の仕方を変えることによって、行動の取り方を変えるように導きます)、特別教育、遺伝カウセリングも行われます。
現在のところ、脆弱X症候群に対する根本的治療法はありませんが、いずれは遺伝子治療が現実のものとなる日が来るかもしれません。
検査を受けた方がいい人
◆子供で、言語や運動発達の遅れ、原因不明の学習障害、自閉症、自閉症のような症状、精神遅滞のある場合。大人で、精神遅滞や自閉症のある場合。
◆家族に脆弱X症候群の人がいる。
◆女性の保因者。
◆50歳以上で、振戦、平衡感覚障害、パーキンソン様症状のある人。
◆不妊の女性で、卵巣機能不全症のある人。40歳以下で閉経をした人。
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